クリプトコッカス症(Cryptpcoccosis)とは
真菌とは?
カビのこと。きのこ、納豆に使う菌、醤油に使う菌、ブルーチーズなども真菌をもったもの。
自然界に普遍的に存在し、また健康な人に無害の寄生体として存在している真菌が、深在性ないしは全身性に感染症を引き起こすことが増加してきている。
症状は?
症状は、徐々に進行する全体倦怠感、疲労感や食欲不振などの非特異的なもの・発熱・頭痛、次いで、吐き気・嘔吐・意識障害が起こる。
脳に病変が及べば、視神経・動眼神経・外転神経などの脳神経麻痺。髄膜炎・脳炎までの症状がおこることもある。
クリプトコッカス性脳髄炎は、永続的な神経の障害を起こすことがあり、致命率は約12%。(注意※但し、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染者の初期症状としてクリプトコッカス症が見られる。そのため、この致命率には、HIV感染者も含まれている。)
初めての感染(初感染)は、病原体の Cryptococcus neoformans を吸い込んで、肺で感染を引き起こす場合が多いが、肺での初感染は何の症状もないことが多い。免疫が抑制されている状態で、肺の病巣から体の他の部分に病原体が広がって感染を起こしたときに初めて症状がでることなる場合が多い。稀に皮膚・粘膜にも初発する。
発生は?
一般人口での患者発生は、10万人につき年間0.2-0.9人。
免疫力・体力の落ちた人たちがかかりやすい日和見(ひよりみ)感染の一つと考えられているが、免疫機能に異常のない人でも、頻度は少ないが発症することがあり得る。
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染者、強力なステロイドの投与を受けている人、臓器移植を受けた人、慢性白血病、リンパ腫、サルコイドーシス、ホジキン病、癌の患者などでクリプトコッカス症症状が見られることがある。
事例は?
カナダのブリティッシュコロンビア州のバンクーバー島で2002年より過去3年間に52名のクリプトコッカス症患者が確認され、2002年には11名に達しており、うち1名は呼吸不全で死亡している。患者検体からは Cryptococcus neoformans が検出されている。同州疫病管理センターの疫学調査では、これまで40頭の周辺動物(犬、猫等のペット類並びに6頭のネズミイルカ)をはじめ、島内の公園にある腐敗したモミ、ハンノキ、ナラ等の木材からも同菌を検出している。
人間だけ?
人以外の動物がクリプトコッカス症になることがある。特に、ネコが知られている。この他、コアラが比較的かかりやすい。(例:多摩動物園のコアラのオス ビリーちゃんが平成13年夏にこの病気で残念ながら亡くなりました。)
クリプトコッカス症になった動物・人から他の動物・人へのクリプトコッカス症の感染は起こりにくいと考えられている。
鳥は、病原体の Cryptococcus neoformans を運ぶことはあっても、鳥自身はクリプトコッカス症にはならない。
これは体温が高いために病原体の Cryptococcus neoformans の増殖が難しいことによる。
診断は?
髄液・皮膚滲出物・喀痰などの直接鏡検で、5-20um、円形の酵母様細胞を証明する。自然条件では人から人への直接感染はないようである。
治療は?
アムホテリシンBなどの抗真菌剤が使われる。この他、ミコナゾール、フルコナゾールも用いられる。点滴静注又は髄膣内注入。腎障害に注意。治療は有効な薬が開発されている。また、肺クリプトコッカス症では自然治癒した例も報告されている。
病原体は?
病原体の Cryptococcus neoformans は、今から100年以上前の19世紀に、三人の学者が独立して発見された。
イタリアでは桃のジュースから Sanfelice,F.(1894年)が、ドイツでは患者の病変部から Busse,O.(1894年)と Buschke,A.(1895年)とが病原体の Cryptococcus neoformans を分離している。当時の患者の報告の多くは、ガン患者についてものである。
病原体の Cryptococcus neoformans には、二種類ある。
病原体の Cryptococcus neoformans は、世界中で通常鳥のフンに汚染された土から分離される。
Cryptococcus neoformans var.neoformans と Cryptococcus neoformans var.gattii は、熱帯及び亜熱帯のユーカリ樹から分離される。
病原体の Cryptococcus neoformans は、鳥のフンに含まれる窒素成分があると、大変よく増殖する。そのため、鳥のフンで汚染される場所つまり、鳥の活動範囲の土からよく病原体の Cryptococcus neofomans は、分離される。
乾燥すると、病原体の Cryptococcus neofomans は、細かい微粒子となり、少しの風で舞い上がる。鳥の活動範囲の空中から直径5ミクロン以下の病原体の Cryptococcus neofomans の細かい微粒子が検出されたという報告もある。
予防のためには?
免疫力・体力が落ちた人がかかりやすいので、免疫力・体力が落ちた人は、かからないように注意が必要です。
免疫力・体力が落ちた人に対して周囲の人は注意が必要です。
免疫力・体力が落ちた人たちが治療を受ける医療機関の周囲では、ハトにエサをあげるのはやめた方が良いです。
野生由来の動物の場合はいろいろな原因不明の病気を持っている可能性があるという認識を持ってください。
ペットや動物はとってもかわいく、スキンシップもしたいし、触りたいですね。
動物とキスをしたり、 口移しによる給餌、動物の食べ残りを食べることはやめないといけません。動物の排泄物(糞・尿)に直接触れないように、吸い込まないように、また動物と接した後は手洗いとうがいをするように心がけることが必要です。